SAコラム
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vol.1  DNAに魅せられて  

  鈴木 志織  [生命科学研究科 分子生命科学専攻]

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「人体」って不思議じゃない?

呼吸をして、食べ物を消化して、怪我を治して。

でもそれって、無意識だよね?

なんで、そんなことができるんだろう?

自分の体のことなのに、何も知らない。

「私はなぜ生きているのだろう?」

 

私が高校生のとき、ふと疑問に思ったことでした。この答えを知りたくて、理系の大学進学を決めたのです。「人体」を形作っているものが「DNA(写真1)」だということを知り、「DNA」についてもっと勉強したいと思ったとき、私の中では理学部生物系という選択しか知りませんでした。そして他大学の理学部生物化学科に在籍し、分子遺伝学研究室というところで基礎的な知識を学びました。でもそれだけでは飽き足らず、さらに深く「DNA」について勉強しようと思い東北大学大学院に進学しました。

 

おっと、自己紹介が遅れてしまいました。生命科学研究科遺伝子変異制御分野の鈴木志織です。DNA に魅せられて、私は現在まで一直線に突き進んできました。学部4年間・大学院修士2年・博士3年の計9年の間、ず〜っと DNA について勉強しているような感じです。

 

ちょっとだけ簡単に私の研究を紹介しましょう。生物はタンパク質からできています。DNA はそのタンパク質を作る設計図(これを遺伝子と呼びます)を含んでいます。この設計図が変化してしまうと、正常なタンパク質が作られず悪影響を及ぼす場合があります。たとえば遺伝病と呼ばれるものはある遺伝子に変化が生じることによって病気になるというものです。遺伝子に変化が生じないように、生物には DNA を防御する機能が存在しています。これは DNA 修復機能と呼ばれ、さまざまな方法で DNA を守っています。この修復機能について、どんなタンパク質がどのように作用して修復するのか、修復できなかったらどうなってしまうのか、というようなことを研究しています(ちょっと漠然としすぎていますが・・・)。

 

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私は主に出芽酵母という菌を使って実験しています。これはヒトの細胞よりも酵母の方が扱いやすいからです。成長が早く、強い(笑)!!そんな彼らを愛情深く育て、DNA を抽出してその変化を観察したり、時には酵母自身を顕微鏡で観察しています。私の研究室はちょっと変わっていて、黄色の蛍光灯を使用しています(写真2)。太陽にさらされている生物は紫外線によって DNA に損傷を受けます。それを同じ太陽光に含まれる青色光を利用して修復しようという修復機構が光回復です。しかし、ヒトにはこの光回復機能がありません。黄色い部屋で実験を行うということは DNA 修復機能の中で光回復という修復機能を働かないようにするためです。初めは黄色い蛍光灯に慣れず、長時間実験していると、すごく疲れてしまっていましたが、5年も生活していると逆に黄色い蛍光灯じゃないと実験がはかどらないようになってしまっています。このような環境で日々研究に励んでいます。

 

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とは言っても、実験ばかり行っているわけではありません。実験から得られた結果をデータ化したり、新しい知識を得るために論文を読んだり、とパソコンに向かっている時間も多々あります(写真3)。ですので、実験室とパソコンが置いてある学生部屋を、毎日行ったり来たりしながら生活しています。

 

そんな私ですが、9年大学というところに在籍して感じることは「DNAに出会えてよかった」ということです。きっかけはテレビ番組でしたが、そこからこんなにも深く DNA について様々なことを知ることができました。どんどん新しいことが分かっている分野ではありますが、その分新しい謎もたくさん出てきています。まだまだ興味は尽きません。みなさんも、自分が打ち込めることをぜひぜひ見つけて欲しいと思います。

 

  【写真1】ヒト細胞の染色体 DNA

  【写真2】私の研究室の黄色実験部屋

  【写真3】DNA の塩基配列を読む




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