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SAコラム

「SAコラム」は、サイエンス・エンジェル(SA)たちが、自分の研究の様子や普段の生活などを語り、女性科学者(大学院生)としての日常を紹介することで、 多くの女子高校生(及び大学生・中学生)に“私もやってみたい”“理系っておもしろそう”と感じて頂く為に企画しました。一般の方にも科学の面白さをお伝えできれば幸いです。

vol.2 とあるSAのちょっとマジメな話
農学研究科 応用生命科学専攻 動物機能科学講座 機能形態学 今井由佳

私は昨年、母校である宮一女高にて教育実習を行いました。担当となった科目は、高校時代に大の苦手だった化学。私が受け持った分野は、ちょうど高校生にとってつまずきの起きやすいところ。自分がなかなか理解できず苦しんだ経験を基に、どういった説明をすれば分かりやすいかを懸命に考え、授業中は生徒の理解が得られるよう気を配りました。すると生徒たちから「とても分かりやすかった」との声をかけてもらうことができ、また大学生活の話をすると興味深く聴いてくれている様子も伝わってきて、とても嬉しく思いました。そして3週間はあっという間に過ぎ、感動と充実感に満ちた、きっと生涯忘れないであろう思い出の実習となりました。

この教育実習で受けた強い感動がきっかけとなり、私は今年度、サイエンス・エンジェル(以下SA)に応募しました。化学や数学が苦手だからという理由で理系への進学を諦める友人を、高校時代に何人も見てきました。そのような理由で理系への進学を諦めて欲しくないという想い、そしてもっと科学に興味を持つことができれば自分のやりたいことを目指して努力できるに違いないという想い。理系進学を考える女子高校生のロールモデルとして、少しでも役に立つことができればと考えていました。

SAとなった私は、宮一女での母校出張セミナーとオープンキャンパスにて、研究室の研究内容を講演させていただきました。しかし研究室での普段のゼミそのままに話したのでは、高校生はもちろん他分野専門の大学院生にも理解してもらうのは難しいことです。自分が高校生だったら、一体どのような内容の話が聞きたいだろうか?また、どのように表現すれば分かりやすく、興味を持って聴いてもらえるだろうか?自分なりに表現を吟味し、最終的には自分の家族にも見てもらうことで原稿を完成させました。

講演の演題は、「美味しく安全な牛丼を食べるための科学」。その内容は、

@ウシ筋肉において、速筋より遅筋の方が美味しいという研究報告。持続的低周波電気刺激(CLFS)により、ウシロース肉の速筋が遅筋へと変化!
A骨格筋を負に制御するマイオスタチンが自然欠損し、脂肪の少ない筋肉モリモリDM牛。「健康ビーフ」として、牛肉は食べたいけれども脂肪量が気になるという方向けに開発中!
B安全な牛肉を食べるため、BSE発症の仕組みを解析中!

という3本立てでお送りしました。美味しい牛肉を生産するため、そして私たちが安心安全な食生活を送るため、一体どのような研究がなされているのか。その一部について紹介しましたところ、高校生の皆さんにとても熱心に聴いていただき、また活発な質問を戴きました。中にはかなり鋭い視点による質問もあり、彼女らの高い思考力および旺盛な知的好奇心に胸の躍る思いでした。 研究室・サークルといった大学生活についても紹介しましたが、こちらも熱心に聴いてくれている様子が伝わってきました。高校生にとって、大学生活は未知の領域が大きいと思います。このような機会があることは、彼女らにとって少しでも自分の大学生活をイメージすることにつながり、また大学入学へのモチベーションを上げることにプラスへ働くのではないでしょうか。。

こうしてSAとしての活動を重ねていくうち、私は“物事の伝え方”の重要性について深く考えるようになりました。東北大学だけでなく、様々な研究機関において日夜多くの研究がなされています。しかしそれらを私たちが直接知る機会は滅多にあるものではありません。環境問題、健康と医療、電化製品進化の背景にある技術、等々。そして科学分野のみならず、政治や経済の仕組み、世界情勢。これからより良い社会を創っていくために知っておくべきことは、世の中に沢山あると思います。 そうした未来を創るに不可欠な情報を、今後の未来を担う若者にも広く分かりやすく伝えていきたい。 そして大好きな仙台、東北、果ては日本の将来を、もっともっと明るく楽しいものにしていく手伝いをしたい。そのような強い想いが、心の中に湧き上がってくるのを感じています。 新たな目標を志す大きなきっかけを与えてくれたSAという制度に感謝するとともに、他のSAの皆さんの活躍、そしてまだまだ始まったばかりであるこの制度の将来に期待を膨らませています。



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