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SAコラム

「SAコラム」は、サイエンス・エンジェル(SA)たちが、自分の研究の様子や普段の生活などを語り、女性科学者(大学院生)としての日常を紹介することで、 多くの女子高校生(及び大学生・中学生)に“私もやってみたい”“理系っておもしろそう”と感じて頂く為に企画しました。一般の方にも科学の面白さをお伝えできれば幸いです。

vol.3 豚から人間へ―生物系なのにパソコンに向かう日々―
医学系研究科 障害科学専攻 行動医学分野 / 公衆衛生学分野 柿崎 真沙子

私は医学系研究科の行動医学という分野に所属していますが、共同研究を行った縁で現在では主に同じ研究科の公衆衛生学分野で研究をしています。

元々他大学の農学部を卒業し、卒論で「豚の世話をすることで人間の生理や心理に変化はあるのか」という研究を行っていました。要するにアニマルセラピーみたいなものですね。この研究がおもしろくて、進学する際に「豚ではなくて人間の側の心理や生理を研究してみたい!!」と思って東北大にきました。今もそうなのですが農学部時代はDNAや細胞よりも動物の行動や人間の生理や心理の変化など、大きなことに興味があったので、卒業研究といえどやっていたことは作業着に豚の臭いを染み付かせながら行動観察をしたり、学生向けのアンケート調査をしたりしていました。

現在研究を行っている公衆衛生学分野では、コホートと呼ばれる10万人以上を追跡調査したデータが集積されており、このデータを解析することで生活習慣とがんや循環器疾患との関連を明らかにする研究を行っています。集積されたデータをパソコンで解析するので、研究室に実験器具の類は一切なく、各人の机の上にパソコンがあるだけでまるでオフィスのようです(写真1:公衆衛生学分野の研究室風景)。つまり東北大に進学し、医学という生物系の分野にいるのに、またしても全く白衣や試験管とは縁のない生活を送る日々です(写真2:自分の研究スペース、というよりも作業スペース?)。

実験することでデータを手に入れる実験系とは違い、データは集積されていくのを待つだけですが、解析が行えるようになるためには数年、長い場合には何十年もかかることがあります。実際海外のデータでは20年以上追跡しているものもあり、長いものでは50年近く追跡している研究もあったりします。データの集積には多くの時間とコストがかかりますが、こういった研究から、「緑茶をたくさん飲む人は循環器疾患死亡のリスクが低い」とか「コーヒーをたくさん飲む人は肝がん罹患リスクが低い」といったような、健康番組で言われているようなことが本当に正しいのか、検証することができます。○○という食べ物が××に効く!!とよく健康番組で取り上げられていますが、動物や細胞レベルでは効果があっても、実際ヒトを対象に大規模な研究を行ってみると、全く異なる結果が発表されることもあり、そこがこの研究のおもしろさでもあると思います。ちなみに緑茶もコーヒーも我が研究室から結果が報告されている研究ですので(写真3:最近発表された論文一覧)、興味のある方は公衆衛生学分野のホームページ(http://www.pbhealth.med.tohoku.ac.jp/)を覗いてみてください。



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