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SAコラム

「SAコラム」は、サイエンス・エンジェル(SA)たちが、自分の研究の様子や普段の生活などを語り、女性科学者(大学院生)としての日常を紹介することで、 多くの女子高校生(及び大学生・中学生)に“私もやってみたい”“理系っておもしろそう”と感じて頂く為に企画しました。一般の方にも科学の面白さをお伝えできれば幸いです。

vol.6 得意なことより好きなことを!
生命科学研究科 植物細胞壁機能分野 倉澤 香澄

こんにちは。生命科学研究科 植物細胞壁機能分野の倉澤香澄です。私は今、大学院で「植物の形づくり」について遺伝子レベルでの研究をしていますが、学部時代は別の大学で別の研究をしていました。他人から見たら研究分野を「変えた」わけですが、自分の中では一本の道なんです。『その時、その時の自分の気持ちを大切に!』今回は、高校生(中学生や大学生)に、そんなメッセージも込めて「私の足跡」を紹介してみようと思います。

もともと私は、生き物(植物に限らず)とか、自然とかが好きで(実家は大自然です;笑)、大学では生き物のことや環境問題とかを学びたいな、と思っていました。大学では植物について農業や環境の面から専門的に学びました。同じ頃、ボランティアでカンボジアに行く機会に恵まれました。現実を、自分の目で見たこと、現地の人と話したこと、肌で感じた感覚は、強烈なインパクトで私の心の中に残っています。いろんな意味で、今の私の原動力になっていますね。

植物で環境問題を解決することができたら、、、そんな勝手な(?)想いを抱いていたら、「植物のチカラを利用して環境をキレイにする」という研究分野に出会ったのです。ファイトレメディエーション(植物による環境浄化技術)と言われている分野です。例えば、重金属などで汚染された土壌があるとします。そこに植物を植えると、植物は土に根を張り、根から水や栄養分を吸収します。このとき、土の中の汚染物質も一緒に植物に吸収してもらい、土をきれいにしよう、というわけです。しかし、植物が汚染物質を吸収できる量は少なく効率が悪いので、実用化されていません。卒業研究では、この技術の実用化を目指した基礎研究として、「植物のからだの中を重金属がどのように移動するのか」、を研究していました。

植物のチカラを利用しよう、、、そんなことを考えていたら「植物のチカラ=植物の仕組み」をもっと理解したいと考えるようになりました。そこで、大学院では今の研究室に進学して「植物の形づくり」について遺伝子レベルでの研究をしています。

植物はたくさんの細胞の集まりですが、細胞の一つひとつの周囲を細胞壁が覆っています。つまり、細胞壁が最終的な形を決めているんですね。それから、もうひとつ私が着目したのは、花。花はとてもいろんな形をしていますね。花の形は、私たちが「キレイだね」って楽しむだけのものではありません。どの花も、自分の子供(種子)をつくるという、とても大切な『お仕事(生理機能)』を行う(生殖機能といいます)ために最適な形をしています。私は細胞壁の遺伝子に着目して「細胞壁と生殖」の境界領域で研究を進めています。

…と、このように大学では「植物をどう利用するか」という農学系の研究を、大学院では「植物そのものを理解する」という理学系の研究をしてきました。両方とも、私のなかで繋がっているんです。回り道かもしれないけど、無駄な道はない、と思います。きっと。高校生(中学、大学生)の皆さん、自分の好きなこと、心が動かされたこと、を大切にしてくださいね。好きなことなら頑張れるはず!



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