Home>SAコラム
SAコラム

「SAコラム」は、サイエンス・エンジェル(SA)たちが、自分の研究の様子や普段の生活などを語り、女性科学者(大学院生)としての日常を紹介することで、 多くの女子高校生(及び大学生・中学生)に“私もやってみたい”“理系っておもしろそう”と感じて頂く為に企画しました。一般の方にも科学の面白さをお伝えできれば幸いです。

vol.8 “物理”で迫るオーロラの謎 〜宇宙と地球のつながり〜
理学研究科 地球物理学専攻 佐藤 由佳

今回はちょっと雰囲気を変えて“物理”のお話です。物理と聞くと、ちょっと敬遠してしまう人もいるかもしれませんが、それじゃもったいない!というのが私の主張です。

私の所属する地球物理学専攻では、“物理”という手法を用いて、地震、火山、気象、海洋、太陽、惑星など(高校では地学として習うものたちですね)、起こる様々な現象について研究をしています。この分野では基本的な物理学を理解していることが必須条件ですが、私は中学時代、物理分野は苦手な位でした。しかし、地球や宇宙で起こる現象に魅せられ、大学ではその謎を解き明かしてみたいと思った高校生の私に、ある先生が言ったアドバイス、それは―地球物理だ、まずは物理を理解しないといけない―というものでした。手段は選んでいられません。苦手な物理も懸命に勉強してみることにしました。すると、なんだか意外におもしろい。身近な現象をシンプルな式を用いて説明する物理の楽しさを発見することができたのです。無事に理学部物理系に入学し、大学でさらに物理の基礎をしっかり学ぶにつれて、ますます難しさは実感されましたが、その一方で、物理学の普遍性・応用性を感じ、その魅力にはまっていったような気がします。

そして今、私は、高校時代特に興味を持っていたオーロラ現象について研究をしています。オーロラは、太陽活動によって磁気圏(地球磁場が作る空間)が影響を受けることによって、主に高エネルギーの電子が地球大気に降り込むことで発生しています。つまり、オーロラは宇宙とのつながりによって地球の夜空に現れる映像なのです。このオーロラの不思議に迫るために、自作した観測装置をアイスランドに設置するチャンスを修士課程1年時に得ることができました。写真1が、上空で発生するオーロラからの電波を検出するために設置したアンテナです。観測をベースにした自分の研究スタイルは、地球物理学コースへ分属した後の学生実験の経験が契機となっており、「自分で考えた計画に基づいて装置を自作し、観測・解析・考察までを全うする」ことが地球物理学研究の醍醐味である、と感じたことから始まりました。機械や電子回路に触れることなど全く興味がなかった(むしろ嫌いだった)私ですが、またもや、「手段は選んでいられない!」とばかりに電子回路製作に悪戦苦闘する毎日です。失敗することもありますが、自分が装置したこのアンテナで新しい現象を捉えることが出来たときの感動は忘れられません。現在は、新たな観測展開を模索しながら、観測した現象を理論的に説明することに取り組んでいます。観測準備以外では、写真2の様に、データ解析や数値計算のためにノートを広げながらパソコンに向かう日々です。

さらに、地球物理では野外観測が重視され、学外や海外に行く機会が多いことも特徴の一つです。私の場合は、アイスランドに観測出張することで「非日常」を体験することができます。神秘的なオーロラを自分の目に焼き付け、アイスランドの大自然を満喫して(写真3)リフレッシュすることが、今の私の一番の楽しみの一つでもあります。また、研究を通して、様々な世代や国の人やその道の“プロ”と交流できることも他では得難い貴重な体験です。

今の私が皆さんに言えることは、「ちょっと苦手だな」と思うものにこそ自分の可能性を広げるチャンスが眠っているのではないか、ということです。何事もやってみなくちゃわからない!どんなことにも精一杯取り組んでみたら、知らない自分に出会えるのかもしれませんね。



<このページの最上部へ>

<SAコラムの一覧に戻る>