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SAコラム

「SAコラム」は、サイエンス・エンジェル(SA)たちが、自分の研究の様子や普段の生活などを語り、女性科学者(大学院生)としての日常を紹介することで、 多くの女子高校生(及び大学生・中学生)に“私もやってみたい”“理系っておもしろそう”と感じて頂く為に企画しました。一般の方にも科学の面白さをお伝えできれば幸いです。

vol.14 農学部動物系の研究〜健康なウシを育てたい!〜
農学研究科 機能形態学分野 田中 沙智

みなさん、こんにちは。農学研究科機能形態学分野の田中沙智です。

私は、ウシの免疫についての研究をしています。私たちの食生活において欠かすことのできない牛肉や牛乳には、美味しさ、安定した供給量、安全性が確保されていることが必要です。そのためには、ウシえさの与え方や、飼育環境を整えてウシの健康を維持することが大切です。そこで私は、ウシの健康維持のために重要な役割を果たす「免疫」についての研究をしているのです。実際には、ウシの首にある静脈から血液を採取して(写真1)、免疫を担当している白血球を分離します。その後、FACSキャリバー(写真2)という機械を使って白血球(顆粒球、単球、B細胞、T細胞に分類されます。)の割合を調べたり、培養して様々な刺激物質を添加したときに、白血球にどんな変化があるかを観察します。さらに、免疫系組織である胸腺や脾臓、リンパ節を用いての組織化学的手法により、組織での免疫系細胞の役割を解析しています。以上の研究により、ウシの免疫メカニズムを明らかにすることによって、感染症の防除方法や、ワクチン開発への応用が期待されます。こういったウシの免疫に関する研究はアメリカやヨーロッパではかなり進んでいるものの、日本の畜産分野では、まだまだ発展途上の分野です。なので、こうしたウシの免疫に関する研究が、日本の畜産の発展に少しでも貢献できればと考えています。

研究室での生活は、自分で計画を立てて、実験をしたり、ウシのお世話をしたり、論文を書いたりしています。また、後輩たちに実験を教えたり、研究室ゼミに参加して発表を聞いたり、最新の論文を紹介します。研究以外にも、農学部のバドミントン大会に参加したり、研究室のメンバーとスポーツをして汗を流します。そして年に数回、学会で自分の研究成果を発表します(写真3)。学会では自分の発表内容に関して、時間をかけて発表の準備や勉強をしなくてはいけません。また学会中は、いろいろな発表を聞いて新しい知識が増え、頑張っている研究者を目の当たりにして刺激を受けます。日本国内だけでなく海外での国際学会でも発表する機会を与えてもらい、非常に良い経験をさせてもらえたことに感謝しています。

今となっては研究をしていることが当たり前となっていますが、大学3年生までは、研究と言えば、難しそうだし、自分にはできなさそうだと思っていました。しかし、4年生から実際に研究を始めてみると、研究には、仮説を立ててそれが正しいかどうかを検証すること、失敗の原因を追求すること、結果を論文にまとめ、人前で発表し、質問に対して答えること、いろいろな人と研究という共通の話題で話せること、終わりがなくて奥深いことなど、多くの魅力があると思いました。これらは実際に経験してみて、わかったことです。それで、大学院に進学してもっと研究について学び、大学院卒業後は研究職に就きたいと思いました。

興味のあること、少しでもやってみたいと思うことがあれば、一歩前に進んで何か始めてみたらいいと思います。ただ、身近な人に聞いてみたり、情報を集めるだけでも、だいぶ違うと思います。そして、できれば実際に触れて、体験してみて、誰かにそのことを言ってみると、もっといいと思います。簡単で、すぐにできることから一つずつ、ぜひ、挑戦してみてください。



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