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SAコラム

「SAコラム」は、サイエンス・エンジェル(SA)たちが、自分の研究の様子や普段の生活などを語り、女性科学者(大学院生)としての日常を紹介することで、 多くの女子高校生(及び大学生・中学生)に“私もやってみたい”“理系っておもしろそう”と感じて頂く為に企画しました。一般の方にも科学の面白さをお伝えできれば幸いです。

vol.19 可能性は無限大 〜夢はいつかは叶えられるもの〜
情報科学研究科 認知心理情報学分野 事崎由佳

みなさん、こんにちは。東北大学大学院情報科学研究科認知心理情報学分野の事崎由佳といいます。

私の専門は、「認知心理学」というものです。大体みなさん、一気にここまで話すと混乱されます。理系なのに文系なの?情報なのに心理なの?と(んー、まあ、えぇ・・・とあまり深くは話さずに、いつもここら辺でさらりと流しているんですけど)。とはいえ、私5年間はそういう理系・文系の中間的なところで研究しています。学部のときは、別の大学で臨床心理士を目指していてそのための勉強をしていました。なぜ、臨床心理を勉強していた人が、こっちの世界に来てしまったか・・・学部の後輩達にもよく尋ねられることですが、学部時代にある先生と出会ったことがきっかけでした。その先生は「実験心理学」といって、実験によって「こころ」ってどんなものなのかを研究していて、その中で脳波やNIRSという機械を利用して、脳とこころの関係を探っていました。その先生と出会うまでは「心理学=カウンセリング」という頭が物凄く強かったのですが、出会ってからもっと基礎的な心理学の領域に目を向けるようになって、私もいつしか「脳とこころの関係」について勉強したいと思い始めたことがターニングポイントでした。もちろん、今までやってきたことから一転、0から学ばなければいけなかった部分が多かったので、研究室が決まってから大学を移るまで、そして移ってから暫くは結構大変でした(・・・今もだったりして!?)。

さて、昔話はさておいて・・・。私の研究テーマはズバリ「幸福」です。「幸福を感じやすい人、そうじゃない人、それぞれのタイプでどんな頭の働き方をしているのだろう?どういう行動をするのだろう?」ということを研究しています。どうやったら幸福になれますか?幸せってなんですか?・・・というのは、メインで研究しているわけではないので聞かれるとものすごく困ってしまいます(できれば、私も知りたいことですから^^;)。幸福と感じやすいかどうかは、生まれ育った環境や友人関係、家族との関係、健康状態など「生活の満足感」と呼ばれるものと強く関係があって、「楽しい」「嬉しい」という感情とも関係しています。幸福かどうかは、一般的に個人でどう思うか(主観的評定といいます)でその程度が調べられています。幸福には「これ!」という概念基準が今のところありません。というわけで、個人個人で判断の基準がバラバラなので、確かな結果を出すには限界があります。私が主にやっていることは@主観的評定に対応するような客観的に見ることができる精度の高い物差し(指標)を作ろうということと、A幸福のタイプ別でどのような日常生活上の違い(頭の働きや行動など)が出てくるのかを認知心理学的な方法を使って調べること。私の場合、ヒトを研究対象としているので、主に学生さんに実験に協力してもらってデータを取っています。ヒトを相手にしていますから、連絡のやり取りや実際の実験場面においてもコミュニケーションをうまくとらなければなりません。こういう時、以前に勉強していた臨床心理学の知識が役立つことが多々あります。

こんな感じで、院に入ってからどっぷりと認知心理学の世界に浸っていて、前に学んでいた学問の影形が薄れていた私でしたが、今年からとある高校でスクールカウンセラー(SC)をしています。小さなことから大きなことまで様々な悩みを抱えている生徒さんの相談に乗ることはもちろんですが、その他にも生徒さんと一緒にごはんを食べたり、ものを作ったり、絵を描いたりしています。一度は目指した道だけれど、臨床ではなくて基礎系に進んだ私。修士に入った時点でもうきっとこの世界には戻れないんだろうなと思って、進路選択後も随分後まで自分の選択が果たしてよかったのかと悩んだ時期もありました。でも、何年か経って、巡り巡ってあるご縁でこのお仕事の話を頂いて引き受けました。

将来就きたい職業はいろいろあるけれど、現実問題、いろんなことがあって思った通りにいかないことって多々あります。ただ、その時のある理由から別の道を選んだからといって、もともと考えていた道はもう諦めるしかない・・・というわけではないと思うんです。遠回りしてしまうかもしれないけれど、その間に他のことも経験しながら、自分が夢見ていた職業を目指すという選択だって十分ありえます。夢を実現させるための方法は1つだけじゃありません。いろんな人に相談したり、また、自分が試行錯誤しながら進んでいると、苦しい時も確かにあるけれど、そのうちに自然といろいろなことが開けてきます。 私の場合、本業である研究とカウンセリングのお仕事というように、自分が夢見たことを両方やれていることはとても恵まれていると思っています。稀なケースかもしれませんが、こういうことも可能性としてはありえます。是非、皆さんも自分の夢はいつまでも最後まで諦めないでくださいね。必ず、何らかの形となって自分の前にやってきますから。

写真1:高校の相談室では、話を聴くということがほとんどですが、部屋にやってきた生徒さんと一緒に様々なミニチュアを使って作品を作るということをしたりもします。これはその道具の1つです。
写真2:ある研究の予備実験の風景。fMRIという機械を使って脳の働きを見る実験をする前にNIRSという機械を使って予備実験を行っている様子です。学生さんに実験に参加してもらって、頭に測定用の装置を被ってもらってから実験を行います。
写真3:装置を使ってとってきたデータをデータ分析専用のPCで処理している様子です。何十件もの実験データを専用のソフトを使って、そのデータの妥当性を数量的に検証する「統計」という作業を行います。



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