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SAコラム

「SAコラム」は、サイエンス・エンジェル(SA)たちが、自分の研究の様子や普段の生活などを語り、女性科学者(大学院生)としての日常を紹介することで、 多くの女子高校生(及び大学生・中学生)に“私もやってみたい”“理系っておもしろそう”と感じて頂く為に企画しました。一般の方にも科学の面白さをお伝えできれば幸いです。

vol.22 夢と夢の交差点
工学研究科 バイオロボティクス専攻 バイオメカトロニクス講座 曽根 美紀子

みなさん、こんにちは!工学研究科バイオロボティクス専攻の曽根美紀子と申します。
 私の専攻は、「機械系」の中の1つです。工学部、しかも機械系って女の子少ないんでしょ?どうしてそんなところに入ったの?とよく聞かれます。私もそんなイメージも持っていました。中・高と私は女子高に通っていましたので、なおさら別世界です。怖いもの見たさ、というのも実はありましたが(笑)、「医療機器の開発がしたい」というのが大きな理由でした。
 中学の頃から医療に興味を持ち、特に医師ではなくその周辺を支える職業・・・看護師、薬剤師などに興味がありました。そしてある時、病院にはたくさんの医療機器があることに気がつきました。「お医者さんが人を助けるのに、医療機器を使う。ということは、医療機器を作ったら多くの患者さんを助けられるし、お医者さんのことも支えてあげられるのでは!?」と思い立ち、医学と工学の連携が盛んであった東北大学の機械系を選んだのです。
幸いなことに現在の私は希望通り、医療系の研究を行っています。テーマは「小型生体硬さ測定センサの開発」です。最近の手術ではできるだけお腹を大きく切り開かずに、小さな穴を開けて器具をそこから差し込んで行うことが多くなっています。器具にはカメラがついていて、その映像を見ながら手術をしています。カメラによって「視覚」情報は得られますが、「触覚」情報が得られません。触覚情報は診断を行うのに重要で、例えば、乳がんは、普通より「硬い」ことでも判別されます。私の研究しているセンサは、直接触れない体の中の硬さをお医者さんにわかるようにしよう!というものです。

こうして夢を追いかけてきた私ですが、夢って1つとは限りませんよね。実は私の小学生の頃の夢は学校の先生でした。大学に入ってからもアルバイトやこのサイエンス・エンジェルの活動などを通じて、人に教えたり伝えたりすることの難しさと、うまくできたときの充実感などを感じました。私自身、科学の話を理解するのが苦手だったこともあり、説明する力を身につけて多くの人に研究のことをわかりやすく伝えたい!と考えるようになりました。
 昨年度私は、スウェーデンの会社で研修生として働かせてもらう経験をしました。お互いに母国語ではない英語で会話をする中で、伝えたいポイントを決めて話をすることの大切さや、伝えたい気持ちが大きければ伝えられることを学びました。そして何より私の将来の夢を応援してくれる同僚たちの言葉が心強く、夢を追いかける原動力を得ることができました。

来年から私は、医療機器の会社で働く予定ですが、研究をするのではありません。例えば新しく開発された機械が安全かどうか確認する実験をして、問題があれば開発者に「どこを直して下さい」と伝え、工場の人に「作るときにはどこに気をつけてください」と伝える・・・というような仕事をする予定です。正直、将来は研究をすることになるだろうと思っていた私にとって、思いがけず出会った職業でしたが、「医療機器を作りたい!」という夢と、「人に伝えたい!」という夢の交わったところにあるお仕事にめぐり合えたのかもしれないと、今は思っています。
 進路を決める時、道を1つに絞ろうとしてしまってはいませんか?私自身も、先生の夢は諦めたつもりでした。でもこうして、多少形は変わっても夢が叶ったことに、私は大きな喜びを感じています。どれだけ現実にできるかはわからないけれど、みなさんにもたくさんの大きな夢を見てほしいと思います。私も、まだまだたくさん叶えたい夢があります。これからそれらが、どんな風に交差してくれるのか楽しみです。

写真1: 今はコンピュータ解析を中心に行っていますが、時にはのこぎりや電動ドリルを使って工作をすることもあります。研究室お墨付きの機械オンチな私ですが、みんなに助けられてどうにか頑張っています。
写真2: 研修先の会社のトラック模型です。同じ部署のメンバーからの「夢に向かって頑張れ」というメッセージが書かれている、私の宝物です。



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