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SAコラム

「SAコラム」は、サイエンス・エンジェル(SA)たちが、自分の研究の様子や普段の生活などを語り、女性科学者(大学院生)としての日常を紹介することで、 多くの女子高校生(及び大学生・中学生)に“私もやってみたい”“理系っておもしろそう”と感じて頂く為に企画しました。一般の方にも科学の面白さをお伝えできれば幸いです。

vol.24 回り道も必要?
医工学研究科 医工学専攻 大嶋 梓

みなさんこんにちは。今回のSAコラムを担当させていただく医工学研究科の大嶋梓といいます。
 みなさんは進路を選ぶとき何で決めますか?興味のあることですか?それとも得意科目で決めますか?興味のある分野=得意科目なら理想的かもしれません。工学を目指していて物理や数学が得意とか。
 では私はどうかというと高校時代、数学・物理の点数はひどいものでした。得意科目は国語と社会。数学は出来なさ過ぎて何でこんなものを求める必要があるのかとすら思っていました。でも当時の私はロボコンや鳥人間コンテストが好きで大学で勉強するなら機械系と決めていました。担任からは文系を進められ続け、そして浪人生に。予備校でも文系を進められ続け、学費とやりたいことと実力に折り合いをつけなんとか都内の大学の物理学科に進学しました。

みなさんは物理学科というとひたすら数式を解いているイメージでしょうか?実は物理学は理科全般につながっている学問なので選択次第ではみなさんが生物や化学と思うような分野が学べます。
 大学進学当初、まだ私は機械がやりたくて物理でも機械っぽいことをと思っていたのですが生物に出会いました。私は高校で生物をとっていなかったのでその時まで選択肢の中に生物分野は存在しませんでした。しかし興味はどんどん生物系に向かっていきました。そして4年生の卒業研究配属でバイオセンサーの研究・開発を行っている研究室に入りました。バイオセンサーは生体分子のタンパク質や酵素、DNAの優れた特性を活かしてセンサーに応用させようというものです。バイオセンサーは病気の判定や新薬開発の分野で使用が期待されます。

私は東北大学には大学院からです。大学4年生の時、研究室の先生が「東北大学に医工学研究科ができたけど受けてみる?」と言ってくれました。正直悩みましたが「これはチャンスだ!」と思い今の研究室を紹介してもらいました。そして今は人工細胞膜を使ったバイオセンサーの開発をしています。医工学研究科は2008年にできたばかりの研究科でよく「何しているところなの?」と言われますが工学の技術を駆使し医学・医療に貢献しようというのが一つの目的です。私も工学の持つ、微細加工技術を使って基板に小さな穴を作製しています。
私は一浪しても志望の大学には進めませんでした。それに今、大学院で研究していることは高校時代に夢見たことではありません。でも私は 浪人したことも今の研究テーマを選択したことも後悔していません。

人によっては回り道と思うかもしれませんがすべて私には必要な時間でした。もし浪人していなかったらきっとこうやって東北大学の大学院生にはなれなかったと思います。高校時代、あれ程できなかった数学や物理は浪人・物理学科を経て人並みにはできるようになったと思われます。高校生くらいだとまだまだ知識が無くて「私のやりたいことはこの科じゃないとだめ!」と思いがちですが実際はそんなことはありません。今は異分野融合です。だから希望の大学に進めなくてもそこであきらめないで下さい。チャンスはいっぱいありますよ!そして知識も増えれば高校時代には思いつかなかった選択肢がきっと生まれてきます。

写真1: 工学の微細加工技術を使って細かな穴を作製します。
写真2: 1の断面の電子顕微鏡写真。
写真3: 作製したサンプルを測定中。



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