Home>SAコラム
SAコラム

「SAコラム」は、サイエンス・エンジェル(SA)たちが、自分の研究の様子や普段の生活などを語り、女性科学者(大学院生)としての日常を紹介することで、 多くの女子高校生(及び大学生・中学生)に“私もやってみたい”“理系っておもしろそう”と感じて頂く為に企画しました。一般の方にも科学の面白さをお伝えできれば幸いです。

vol.4 自然界からくすりをさがす
薬学研究科 医薬資源化学分野 星 朋子

皆さんは天然物化学、って御存じですか?私は大学院で天然物―つまり、自然界のものから生理活性物質(薬のもと)をさがし、それをより薬へと近付けていくための研究を行っています。そういう研究を、天然物化学あるいは天然物薬学とよんだりします。

具体的にどういうことをやっているのかというと、まず天然資源(その内容は漢方薬に使われるような薬用植物から、カビなどの菌類に至るまで様々です)の成分をアルコールなどに漬けこんで抽出します。そうして成分が溶け出したら、濃縮し、そのエキス(たくさんの化合物が混ざっている状態)の中から実際に薬理活性を示す化合物(薬のもと)をさがします。はじめは多成分の混ざりでも、精製 ―つまりきれいにする操作を繰り返すうち、ついに、たった一つの化合物に行き当たります。精製にはカラムクロマトグラフィーなどの手法を用います。見つけた化合物は、様々な機器分析によって、どういうかたちをしているのか調べます。必要とあればその物質を試薬からつくったり、構造変換(形を一部変えることです)したりもします。地道で根気の要る作業ですが、思いもよらないかたちの化合物や、とても強い薬理活性をもつ化合物に出会ったときは、喜びもひとしおです。


天然物化学をやっていると、自然の力、生物の力には本当に驚かされます。薬そのものは現在、化学合成によって作られるのが主ですが、その「薬のもと」はこういった研究から磨かれていたりするのです。天然物って、面白いと思いませんか?


写真1:カラムクロマトグラフィー。中に詰まっている担体(シリカゲル)と仲の悪い化合物は先に、仲の良い化合物は後から出てきます。そうして、たくさんの成分の混ざりだったエキスが、だんだん一つの化合物へと絞られていきます。
写真2:化学合成している様子。ナスフラスコに試薬をいれて反応すると、新しい化合物をつくることができます!



<このページの最上部へ>

<SAコラムの一覧に戻る>