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SAコラム

「SAコラム」は、サイエンス・エンジェル(SA)たちが、自分の研究の様子や普段の生活などを語り、女性科学者(大学院生)としての日常を紹介することで、 多くの女子高校生(及び大学生・中学生)に“私もやってみたい”“理系っておもしろそう”と感じて頂く為に企画しました。一般の方にも科学の面白さをお伝えできれば幸いです。

vol.7 横に広げたものが、縦に繋がる瞬間☆
薬学研究科 臨床薬学分野 原 梓

こんにちは。薬学研究科 臨床薬学分野、博士後期2年の原 梓です。

私の研究室は薬学研究科と医学研究科の合同の研究室で、薬剤師だけではなく、医師・歯科医師・保健師・看護師・栄養師など、幅広い職種のスタッフ・学生で構成されています。この研究室では、岩手県花巻市の大迫というところで、大迫研究という高血圧に関する疫学研究を行なっています。疫学研究というのは、ある地域に含まれる人の集団を対象として、病気とその原因との関係を長期間にわたって観察する研究です。(写真1:検診にて)大迫の住民のほとんどの方に、家庭血圧を測って報告してもらっています。家庭血圧というのは、日常、家庭において自分で測った血圧のことです。これにより、家庭血圧のほうが、病院や健診での血圧よりも低いということ、また、高血圧に伴う心臓病や脳血管障害を高い精度で予測できることがわかりました。つまり、家庭血圧の測定は、医療のツールとして、非常に利用価値が高いといえます。そのことを世界で初めて発表したのがこの大迫研究になります。現在、家庭血圧を用いた研究で20年もの歴史を持っているのは、大迫研究のみで、世界の家庭血圧の基準設定のもととなるなど、世界的な情報を発信しています。(写真2)

修士課程まで家庭血圧の研究のみを行なっていた私は、博士課程になり薬剤師だからこそできる研究にも取り組み始めました。それは健康食品や一般用医薬品(処方箋の必要がなく、ドラッグストア等で購入する薬)に関する研究です。私がこの研究テーマを始めたのは、医療実習先や薬局などで、健康食品の有用性、危険性、そして医師から処方される薬との悪い飲み合わせといった問題点を感じたからです。(写真3:薬局にて)

これまでのテーマに加え、新しいテーマに取り組むことは、とても充実した研究生活のように聞こえますが、実際は自分の研究が広がり過ぎて、手が回らなくなっていました。広がった研究をどのように深めるか、自分の中で一貫性が持てずに悩んでいたのです。「これまでの研究も興味があるし、新しい研究もどんどん進めたい。本当は両方とも深めたいのだけど・・・どうしよう。」

そんなある日、研究費申請の書類作成が思うように進まず、もう今日は帰ってしまおうと、いつものように終了時間ぎりぎりに最後の1人としてジムに入りました。もう誰もいない時間だったため、インストラクターさんとお話をしながら身体を動かしていると、彼女が自分の夢を語り始めてくれました。「私の夢は、フィットネスで世界中のみんなを病気から予防して健康にすること。」それを聞いた瞬間、私の中でモヤモヤが繋がったのです。私は研究室にすぐに戻り、書類を一気に書き上げました。考えてみてください。家庭血圧と健康食品、一般用医薬品、すべて「みんなを病気から予防して健康にすること」だったのです。横に広がっていたものが、縦に繋がり深まった・・・この瞬間の感動は忘れられません。

今は、自分の中での価値基準を理解し、横に広げたものがそこに繋がるように意識しています。今広げていることが必ず一つに繋がると信じています。横に広げることは悪いことではないのです。むしろなにか始めてみなければ、なにも得ることはできません。皆さんもいろいろなものに挑戦し、自分の好きなことを見つけ、深めてみてください。



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