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SAコラム

「SAコラム」は、サイエンス・エンジェル(SA)たちが、自分の研究の様子や普段の生活などを語り、女性科学者(大学院生)としての日常を紹介することで、 多くの女子高校生(及び大学生・中学生)に“私もやってみたい”“理系っておもしろそう”と感じて頂く為に企画しました。一般の方にも科学の面白さをお伝えできれば幸いです。

vol.17 敬愛なる全ての生物へ
生命科学研究科 分子生命科学専攻 遺伝子変異制御分野 尾崎 加奈子

今日はいい天気。おやつを買いに研究室の外へ出てみます。青い空、白い雲、澄んだ空気・・・。うーん、いい気持ち。ふと、鮮やかな赤の花と濃い緑の葉を茂らせたサザンカの木が目に留まります。私は考えます、「この瞬間に、一体どれだけの光合成が行われているのかなぁ?」そしてこう思うのです、「私の気付かないところで、生物の生きるための活動が行われているんだなぁ。」

生物の体を構成している主な元素は、水素、酸素、炭素、窒素、リン、硫黄です。その他の微量成分としてはマグネシウムやカルシウムや鉄などがあげられます。しかし、これらの物質を単に混ぜ合わせても、生物の体やそれを維持するための仕組みをつくることはできません。生物が生物として生き、活動するためには、原子同士が厳格な秩序と法則に従って結合することで出来上がった分子が、これまた厳格な、しかし柔軟な秩序のもとで互いに反応したり、組み合わさったりすることが必要です。そうして初めて、細胞や組織を構成する部品や、生命活動をするための装置や、エネルギーを得るための原料が出来上がります。

生物の、基本的でシンプルな生きるための活動は、バクテリアや酵母菌といった、とても小さな、たった一つの細胞でできた生物の体の中でも起きています。ヒトを含めた動物や植物のように、たくさんの細胞からできている大きな体を持つ生物では、確かにバクテリアや酵母菌とは比較にならないほど複雑で緻密な生命現象が起きていますが、バクテリアや酵母菌の視点、“細胞”という視点でヒトを見たときでも、そこにはバクテリアや酵母菌の中にも見られるような生命現象を垣間見ることができます。バクテリアや酵母菌のような小さな体の中にも、神秘的でドラマティックな出来事が秘められているのだと思うと、「彼らは小さくてたった一つの細胞でしかできていないから下等なのだ」という意見は大きな意味を持たない気がします。また、原子の組み合わせによって出来上がった分子が、最終的に生物を形作るだけでなく、それを維持するための仕組みさえもつくり上げているということを考えると、「生物って本当によくできているなぁ」と感心せざるを得ません。きっと、こんな風に思っているのは、私だけではないはずです。

私は、そんなヒトの目では見ることができないミクロの世界で起こっている出来事に惹かれて、分子という小さな単位から生物を理解する学問・分子生物学を勉強したり研究したりしています。そして、生物が誕生して以来、脈々と続く生命現象のその一端を、自分の手で解明することが出来たらどんなに嬉しいだろう、わくわくするだろう、と思うのです。そんな夢のようで夢ではない発見を夢見て、日々私は実験机に向っています。

写真1:ただ今実験中・・・
写真2:酵母菌は育っているかな?
写真3:酵母菌の中身を見てみると・・・

※ 尾崎加奈子さんは19年度サイエンス・エンジェルとして活動いただきました。



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