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SAコラム

「SAコラム」は、サイエンス・エンジェル(SA)たちが、自分の研究の様子や普段の生活などを語り、女性科学者(大学院生)としての日常を紹介することで、 多くの女子高校生(及び大学生・中学生)に“私もやってみたい”“理系っておもしろそう”と感じて頂く為に企画しました。一般の方にも科学の面白さをお伝えできれば幸いです。

vol.20 チャンスの女神の前髪
工学研究科 土木工学専攻 環境生態工学研究室 長濱 祐美

みなさんこんにちは!長濱祐美と申します。今回のSAコラムは私が担当させていただきます、よろしくお付き合いくださいね。
 さて、私は今でこそ東北大学の大学院生ですが、4年前までは東海大学に所属していました。つまり、大学から大学院に進学するときに大学を変えたのですが…今回はその話をしたいと思います。 
 私は、小さいころから生物や自然環境が好きでした。特にクジラが大好き。大学ではクジラの生態を研究したいと考えていて、得意科目は生物。一方、数学や英語はいつも赤点スレスレ…。鯨類研究室のある国立大学を目指して一生懸命勉強しましたが、受験に失敗。一年浪人して、鯨類研究室のある東海大学に進学することが出来ました。

大学3年生の時、授業で紹介された『生態工学』が強く私の心を惹きつけました。生態工学とは、生態系を強化し、破壊された生態系を治し、生態系を利用することで、人間と自然の共生を可能にしようとする技術です。卒業研究のために研究室を選ぶ時、私は悩みました。今までずっと目標にしてきた鯨類研究か。それとも環境問題を解決できるかもしれない生態工学の研究か…。悩みに悩んで、結局、私が飛び込んだのは生態工学の研究室でした。4年生になると同時に、初めての研究生活が始まりました。論文を読んだり、生物の世話をしたり、調査に出かけたり。すごく楽しい生活だと思いました。

そんな時、研究室の教授に呼び出されたのです。
 『長濱さん、東北大の大学院に進学しない?』教授は突然言いました。東北大には生態工学の専門研究室があるというのです。ただ、その研究室は工学研究科だといいます。工学といえば物理・数学。私は高校のときに物理を選択したことがありませんでしたし、数学は赤点スレスレでした。大学院に入るのにも入学試験がある。東北大学の大学院、しかも工学研究科なんて絶対受からないよ!という私に教授は言いました。『長濱さん成績いいし、行く気なら推薦してあげるけど?』
 物理も数学も分からない、そもそも学力に差のある私が、東北大に進学してやっていけるのだろうか…不安はある。不安はあるけど、これは凄まじいチャンスなんじゃないか?よし!やってみよう!!

ということで、私は東北大学大学院、工学研究科に進学することになったのです。入ってからはやっぱり大変でしたけど、研究室の仲間に助けてもらえました。そして、生態工学という研究領域は予想以上に魅力的で、現在までものすごく楽しい研究生活が続いています。
 あのとき、恐れをなしていたら、今の私はないでしょう。もし、浪人して一年頑張らなかったら、大学で授業をサボっていたら、きっと成績は良くなかったでしょうし、きっと今の私もないのです。チャンスの女神は前髪しかない、といいます。通り過ぎてから後ろ髪を掴むことは出来ないのです。不意にチャンスが来たときに、それを逃さず掴めるように。チャンスを引き寄せて、自分で夢を掴み取れるように。努力を重ねてください。努力は夢を掴むチカラになります、たとえ今すぐじゃなくても。必ず。

写真1:研究対象の干潟。たくさんの生物の棲む環境です。
写真2:調査は大変だけど楽しいですよ〜。
写真3:明けない夜はない!ちいさなことからこつこつと。



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